樋口一郎コラム

「部下ヂカラ」でボスを変えよう【実践編】その4

ファザーリングジャパン九州の樋口です。2017年もよろしくお願いします。

先日、「2017年は「九州イクボス元年」に」との小津副代表理事からのコラムもありましたが、年末年始にかけてもイクボスの全国的なムーブメントはとどまることを知りません。

先日は初めて国家機関の大臣としては初のイクボス宣言を厚生労働省の塩崎大臣他厚労省職員が行いました。九州のイクボスの動きも注目です。現在10名のイクボスインタビューを掲載中です。

 

さて、毎回申し上げていますが、イクボスを組織に根付かせるためには上司が変わるのを待つだけではなく、部下の立場で「部下ヂカラ」で上司を触発していった方が効果的です。

その部下ヂカラ発揮のキーワードとなる10か条。今回はついに最終回。
残るキーワード「自己分析」「職責全う」について触れたいと思います。

 

<これまでの記事>

「部下ヂカラ」でボスを変えよう【実践編】その1(樋口一郎)〜部下ヂカラ10か条〜

■その9「自己分析」

今一度自分を見つめ直し、無理をしていないか自覚しよう。 人に任せられることはまだまだ見つかる。

「部下ヂカラ」の話を外部ですると、特に男性に多いのですが、「仕事は自分にしかできないのだからしょうがないだろう」という意見です。これって本当でしょうか?

確かに一挙一動自分の意のままに仕事をするのは自分自身でしかできないかもしれません(当然ですが)。しかし、「成果」が何なのかで見た場合、仕事にはいろいろなアプローチがありますし、異なる他人のアプローチでうまくいく仕事もあるかもしれません。また、人に仕事を任せることで、自身は身軽になり他の仕事を見つけたり業務改善したりする余力もできますし、同僚や部下の育成にもつながります。

こういった観点から、「自己分析」し、人に任せられる仕事は積極的に人に任せ、仕事から身軽になってみませんか。

私の経験から言うと、仕事を人に任せることで、少なくとも3つのメリットがありした。

(メリット1)

1つ目は、仕事の段取りを「マニュアル化」、「棚卸し」できたことです。個人の「暗黙知」で仕事を進めてしまうと、組織の中で他人からは仕事のやり方が見えないタコツボ化が進むことになり、一見効率的なようですが、一定の人に業務を依存してしまう潜在リスクの高い職場になってしまいます。マニュアル化が進めば、お互いのフォローにより仕事のバックアップが可能になり生産性も上がります。

(メリット2)

2つ目は、先に述べた「人材育成」です。率先して権限を委譲し仕事を周囲に任せることで、「どうやったら他のメンバーがやりやすいだろうか」と考える癖ができ、同僚や部下の計画的な育成が可能になります。また、こうした経験を若い間から積んでおくと、将来管理職になった際の練習にもなり、良いことづくめではないでしょうか。

(メリット3)

3つ目は「時間確保」です。当然ながら仕事を人に任せると自分の時間が確保でき、よりレベルの高い視点で業務改善や新たな取組にチャレンジすることができます。これが職場を不断に改善していく原動力にもなります。

 

■その10「職責全う」

権利主張に終わらず自らのタスクを果たすべく上記の工夫を行いつつ取り組もう。工夫を通じて自らを楽にする快感を追い求めよう。

ワークライフバランスの取れた職場においても、「成果主義」は非常に重要です。NPO法人ファザーリングジャパン理事で「元祖イクボス」と言われる川島さんも、イクボスは「福利厚生ではなく経営戦略だ」と常日頃おっしゃっており、私も全く同意します。

制約社員が増え、もはや「24時間滅私奉公」ビジネスモデルがなりたちにくい現代、限られた時間でいかに成果を出すかというマネジメントやワークスタイルが求められており、部下としても生産性を常に意識して働き、求められる成果を上げ、ボスを納得させた上で家族のもとに早く帰れるようなスタイルを確立することが求められます。

しかし、働き盛りの30〜40代のパパからは、「仕事の成果を出すためにはどうしても長時間労働してしまう」といった嘆きもよく聞かれます。

かくいう私も、数年前までは、季節的な業務の増加が理由で、長時間労働当たり前の環境にいました。

以下の西日本新聞コラムにも書いたのですが、それを見直すきっかけは、共働きの妻から「このままでは仕事を続けられない」と訴えられたことでした。仕事量が多いから忙しいのは当然、と漫然と思い込んでいた自分を見つめ直し、必要な仕事と不要な仕事の切り分けを行いました。

数週間を要するような大がかりなプロジェクトについては、チーム内での業務進捗カレンダーといった「ツール導入」で「予定先取り」し、チーム内で徹底的な「コミュニケーション」を図り仕事を「見える化」するといった「改善提案」を日々積み重ねていった結果、部署全体での残業時間平均を大幅に削減し、なおかつこれまで以上の成果を上げることに成功しました。

その際に気付いたのは、チームであっても、お互いの業務のやり方が見えていないと無駄・無理・ムラが大量に発生してしまうということでした。皆、同じ成果なら業務量は少ないほどいいので、その後は私のいた部署のコミュニケーションも活発になり、私がいなくなった後でも業務改善に引き続き取り組む環境ができているようです。

(参考)西日本新聞コラム「パパスイッチ」

 


<さいごに>

さて、昨年から半年間かけて解説させて頂きました部下ヂカラ10か条、いかがだったでしょうか。

今回の2つのキーワード「自己分析」「職責全う」はともに、自分の仕事だけこなすといった姿勢だけでは達成は難しいのかなと思います。

つまり、今のポジションより少し上のポジションになったつもりで「我が社をこういう会社にするためには(将来的に)どうしたら良いか」という幅広く長期的な視点が必要になると思います。

偉そうに言ってきた私も現実には「部下」であり「上司」である二面を持っており、いろいろ解説しておきながら「イクボス」にも「部下ヂカラを発揮する部下」にも、まだまだなりきれていないと思っています。

また、部下ヂカラが120%発揮できる職場は一石一夕にできるものではなく、社内の風土を少しずつ変革して行く必要があることも事実です。

このコラムを最後まで読んでくれた皆さん、ありがとうございました。これから共にイクボス、部下ヂカラ文化を九州に発信していきましょう。

(執筆:樋口一郎