この「”新”九州男子のすすめ」は、男性に、仕事だけではなく、家事や育児にも積極的に参画して、家庭での役割をより楽しんでもらうため、子育てに関する新米パパの心得をまとめたWEBハンドブックです。

※当ページの情報は、2015年度に発行された北九州市の「新北九州男子のすすめ(FJQにて監修・制作協力)」を抜粋し一部アレンジしたものです。正規版は同市公式ページよりご覧いただけます。

完璧に育児ができる人なんて誰もいません。そもそも正解なんか ありません。大切なのは、パパとママが楽しく子育てをすること。 そうすることができれば、おのずと子どもはそれを見て成長しま す。以前は、家のこと(家事・育児)は女性のもの、男性は大黒柱と して外で稼いでくるといった構図がごく普通でした。

しかし、今は 男性も家のことをするのが当たり前の時代です。古い価値観を持っ ている人は、新しい家族ができるという、この大きなタイミングで、 意識を入れ替えませんか。そうすることで、何よりも自分が楽しく、 そして家族が幸せになりますよ。

パパ業ほど素敵な仕事は無い

パパ業は地球上でもっとも素敵な仕事です。会社の仕事も大切ですが、代わりの人材はいます。しかし、家族を守り、ママを支え、子どもを見守る仕事はパパにしか出来ません。手伝う、参加するといった気持ちではなく、自ら進んで主体的に動きましょう。だって、自分の子どもですから。パパが子育てに関わるとたくさん素敵なことがありますよ。

 

ママとの関わり方

子どもができると、ママのためにと育児や家事を一生懸命に行うパパは多くいます。しかし、もっと大事なことはママを気遣い、声をかけること。ママの大変さに耳を傾け、受け入れる。キーワードは「傾聴」と「共感」です。常にママがどうしたいのかを理解することが、ママのケアにつながります。サプライズよりも日々の積み重ねの方が、より喜ばれますよ。

ママの心と身体

妊娠から出産前後は、ママの身体は大きく変化します。大切な命を育んだ証です。でも、その変化に一番戸惑いを感じているのは、当の本人なのです。つわりにより気分が悪くなったり、身体がだるく感じたりします。

妊娠線予防や、足のむくみケアのためにクリームを塗ったり、マッサージをしてママのケアをしながら、スキンシップで直に変化を感じるのも効果的です。いたわりや感謝の言葉もかけやすくなります。妊娠中や出産直後に気をつけるポイントもあるので、一緒に調べて共有するだけでも価値がありますよ。また、飲酒や喫煙などにも配慮しましょう。

ママの気持ちを理解しよう

男性と女性で、コミュニケーションの特徴が違うという話は聞いたことがありますか?男性は問題解決を求め、女性は共感を求める傾向があります。「話を聴いてもらいたい」と思っているんです。

「聴く」の漢字は、「耳を傾け、十四の心を込めて」相手と向き合う姿勢を示しています。受容する心、理解する心、感謝の心など、心を込めてママの話、聴けているでしょうか?最近は企業で求められる能力のトップがコミュニケーション能力です。夫婦間でできているかは、外の社会でも影響を与えます。

よりよいパートナーシップとは

家庭の中でパートナーシップを組むということは、相手の心と身体に関心を持つ、相手の気持ちを理解する、そして、家のことや子育てのことをどちらがやってもOKという状況をつくること。

まずは「一緒にやるのが当たり前」と位置づけましょう。そこは、割合をきちんと分担するよりも、しっかり話し合って情報共有し、一緒に成長することが大切です。いつまで経ってもママに確認しなければ進まないというのでは、会社で言うと新入社員のまま。「はじめての経験だから分からない」のは、ママも同じではないでしょうか?一緒に成長していくことで、効率よく、時間も心も余裕を持ってやれるようになりますよ。「手伝うよ」、「協力しようか」はNGワードです。

産後クライシスに気を付けましょう!

日本では一年間に約22万組の夫婦が離婚します(厚生労働省平成26年人口動態統計)。婚姻件数が約65万組ですから約3分の1の夫婦が離婚していることになります。出産後に夫婦関係が悪化し、離婚の危機となる「産後クライシス」が増えています。

産後のママは、体も心も不安定になります。新生児には数時間おきの授乳で慢性的な寝不足の中、はじめての育児に神経をすり減らしている時に、パパが非協力的であったり、無理解な発言をすると、ママは非常に傷つきます。産後の大変な時期にパパが家事、育児を率先して行うことも大事ですが、まずはママの気持ちに寄り添い、一緒に育てていこうという姿勢が大切です。

子育ての基礎知識

ママに「妊娠しているかも?」と言われた時から、あなたの新米パパライフはスタートします。ママだってはじめてで不安なのです。だからパパの反応がとても大事です。パパだっていろんな思いがあるでしょうが、その思いは心に閉じ込めて、笑顔で「ありがとう!」と喜びの言葉と表現で伝えましょう。

妊娠が分かった頃も産後も、ママは体や気持ちのコントロールが難しくなります。ママの気持ちに寄り添ったり、家事・育児のサポートをしましょう。妊娠中のママのサポートが子育てのはじまりです。産後は特にママとのコミュニケーションを密に取りましょう。数時間おきに授乳で起きたりとママは必至です。パパは、乳以外はできる父だとママに伝え、一緒に育て、頑張る姿勢が大切です。

子どもの成長・発達

赤ちゃんは日々変化し、成長します。寝返り、おすわり、ずりばい、はいはい、たっちと「はじめて記念日」が続きます。赤ちゃんと暮らす日々は毎日が特別で、親になった喜びを実感できるでしょう。二度とない成長の瞬間をパパも見逃さないようにしましょう。

身体同様、心も発達します。泣くこと、笑うことにはじまり、二歳頃になるとイヤイヤ期もあります。たくさんパパが抱っこをして微笑みかけてあげることで、赤ちゃんも笑顔が出るようになります。イヤイヤ期には、「自分でやりたい!」という欲求に目覚めるのです。親からすると大変な時期ですが、親が何でもやろうとするのではなく、我が子が自立しようとする姿を応援しましょう。

子育てのためのお金の知識と準備

子育てにいくら必要か知っていますか?金額は教育方針や進路によって大きく変わってきます。すべて国公立の学校に通った場合は1,000万円、すべて私立の場合には2,300万円必要だと言われています。児童手当など国や自治体からの補助もありますが、一番教育費用が必要なのは大学生の時期です。一人暮らしをすることになれば、更に費用がかかります。親としてどこまでするのかを夫婦で話し合うといいでしょう。

収入面は、正社員で働き続けた場合と、出産を機に退職した場合では2億円以上も違ってくると言われています。子どもが生まれる、家族の大きな変化の時に、家族のライフデザインを考えてみましょう。夫婦それぞれの働き方、収入について、住居、教育費、老後などの大きな費用について考えて、長期的な視点で計画を立ててコツコツ準備をすることが大事です。

ライフデザインは一度作ったら終わりではなく、夫婦で節目ごとに話し合って、見直しましょう。また出産にかかわる制度をよく知っておきましょう。産後のママは体が動かせませんので、出生届などのお役所回りはパパの出番です。お金に関わるものでは、出産一時金、出産手当金、育児休業中の給与保障、児童手当などがありますので漏れなく手続きをしましょう。

主な手続き 内 容 等 届出・問合せ先
出生届 出生した日から14日以内 各役所市民課・出張所
出生育児一時金 医療保険加入者への支給金 加入している健康保険担当部署
乳幼児等医療 乳幼児等の医療費の助成制度 各役所子ども家庭相談コーナー
児童手当 中学3年までの児童の養育手当 各役所子ども家庭相談コーナー

 

幼稚園3歳から高等学校第3学年までの15年間について、各学年ごとの「学習費総額」を単純合計すると、すべて公立に通った場合では約500万円(前回調査結果は約504万円)、すべて私立に通った場合では約1,677万円(同約1,702万円)です。最も支出額が多いケースは、最も支出額が少ないケースの約3.36倍(同3.38倍)です。高校生までの教育費と大学などの教育費に分けてどのぐらいなら準備できるかをシュミレーションしてみましょう。保険、教育ローンや奨学金、そして資産運用などの手段を活用することを学ぶことで、子どもが生まれてからの長期間で効率的に準備することも可能です。老後の費用と合わせてファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみましょう。

 

まずはやってみよう!

第1子の場合、ほとんどの人が育児は初めての経験です。それはママだって同じ。授乳以外は全てパパもできますし、同時にスタートを切ることで育児スキルはママと同じレベルになれます。また、ここでの子どもとの接触時間によっては「ママじゃないとダメ」という現象が起こってしまいます。そうなると、パパもママに頼りがちになり、なおさら子どもがなつかない、といった悪循環になります。まずはやってみる。そして、量をこなすこと。そうすることで徐々にスキルはアップしていきます。

子どもの生活リズムを知ろう

子どもも大人同様、生活のリズムが狂うと体調や気分に影響します。朝起きる時間、寝る時間、食事の時間など、子どもがいないときは不規則になりがちです。しかし、子どもの生活リズムをつくることが乳幼児期には特に大切です。リズムが整い体調が良いと心も安定します。日中ぐずぐずすることが多かったり、夜あまり寝ない、何度も起きるなどは、リズムを整えてあげると改善することもあります。パパの時間ではなく、子どもの時間に合わせましょう。

オムツ替えはうんちの時こそ

おしっこやうんちは、子どもの健康のバロメータです。色、におい、硬さなど、毎日見ているからこそ変化に気がつきます。ママにも一目置かれるチャンス。赤ちゃんにとっても不快を取り除いてくれる人は、大好きになりますよ。また、おむつが外れるまでの過程では子どもの成長を感じることができます。パパ友ママ友とおむつが外れる時期についての話題が出ることがありますが、これは子どもによってまちまちなので、「誰もがいつかは外れる」という気持ちでどっしり構えておきましょう。

子どもと二人だけの時間を作る

ママと一緒に育児を行うと、どうしてもママを頼ってしまいがち。ときにはママには外出でリフレッシュしてもらい、思いきって子どもと二人だけの時間を作りましょう。やるしかなくなれば、意外とできるものです。慣れてきたら、二人だけの外出にもチャレンジを!父子旅行なんてすると、一発で「パパすごい」と言ってパパを大好きになりますよ。

子どもと遊ぼう

子どもはおもちゃが大好きです。しかし、おもちゃだけで満足をしているわけではありません。おもちゃで遊ぶことよりも、パパが一緒に笑って遊んでくれることが一番好きで楽しい時間と感じています。おもちゃはいずれ飽きますが、パパとの楽しい時間は飽きることがありません。また、体を使った遊びや、虫の観察などはパパならではの遊びかも。新聞紙をビリビリに破くだけでも子どもは大喜びです。自分が子どもの頃に楽しかったことを思い出してみるのも一つの手ですね。

パパ絵本

絵本は最高の親子のコミュニケーションツールです。気軽に付き合いましょう。書いてある通り読む必要もありませんし、子どもと会話をしながら読んでもOK。膝の上で絵本を聞いてくれるのも期間限定!しっかり楽しみましょう。絵本はママが選びがちですが、パパとママがそれぞれ選んだ絵本は異なることが多く、子どもにとっては多様性や想像力の幅が広がります。冒険、アクション、だじゃれ、はたまた下品な絵本など、ママが選ばないだろうなーという観点から探すのもいいですね。大事なのは、どんな絵本を読むか、ではなく、子どもと一緒に楽しめるか、です。

家事で夫婦仲が深まる

家事に苦手意識をもつ男性は多くいます。意識のどこかで、家事は女性のものとして考えていませんか?パパが家事を行うと、夫婦仲も深まり、離婚のリスクも減ります。他のパパと比べて、「オレはやってるぜ」と思っても、実際はママに負担が偏っています。また、家事を行うパパにありがちなのは、やった家事を自慢すること。クールに決めてこそ、パパの評価があがります。それぞれ、家事のやり方は家庭によって違います。最初は難しいけれども、家事の先輩であるママに真摯に教わりましょう。家事の役割分担なども含め、日常的にママと話し合って共有しておくことが大事です。

パパ料理のススメ

自分のためや趣味で作る「男の料理」ではなく、家族のことを思いやり、家族のために作るのが「パパ料理」。料理を作るのはお母さんの仕事というのが一般的ですが、だからこそお父さんが作る料理は特別です。難しい料理でなくても、即席ラーメンや焼きそばでもママは十分嬉しいのです。きっと子どもも喜んで食べてくれます。まずは簡単な料理からはじめましょう。最近ではインターネットでレシピが見られるサイトも多くあります。レシピどおりに作れば誰でもおいしく作ることができます。分からないことは、ママに教えもらいましょう。後片付けも忘れずに!

イキメンになろう

もっとパパ自身が育児を楽しむための方法に、地域活動に参加することがあります。イキメンとは地域活動を積極的にするパパのこと。地域と関わると今まで家族や職場、仕事関係だけの人間関係だったのが老若男女、本当に様々な方と知り合うことができ、新たな自分の居場所もできます。子どもにとっても親や学校などとは異なる「斜めの関係性」をもつ居場所ができ人生に広がりがでてきます。地域みんなで子どもたちを育てると考え、まずはお住まいの地域での活動、イキメンをはじめてはいかがでしょうか?なかなか自分一人だけだと入りづらいですが、子どもが小さいときこそチャンスです。子どもが関われる行事からまずは参加を。

パパが育児・家事に関わるメリット

 

ワーク・ライフ・バランスって何?

ワーク・ライフ・バランスと聞くと、シーソーのように、いわゆる半々の状態をイメージする方が多いかと思います。実際は、家庭が充実すれば仕事に打ち込むことができ、仕事が順調だと、家族も円満になるという、相乗効果があるはずです。また、子育てや地域活動は仕事の能力や人脈にも結びつきます。色々な具材を混ぜれば混ぜるほどよいダシが出る寄せ鍋のようなイメージです。これらは、1日単位でバランスを取ろうとするのではなく、長い視点で考える必要があります。仕事で遅くなる日もあれば、早く帰り家のことを全て行うなど、夫婦のワークライフバランスへの考え方をしっかりと話し合い、理解しあうようにしましょう。

職場でのパパ宣言

仕事を終えて早く帰る工夫の一つとして、パパ宣言があります。声高に宣言する必要は無く、机の上に子どもの写真を置く、普段から家族の話を同僚にするなど、さりげなくアピールをしましょう。子どもの急な発熱などで、仕事を切り上げなくてはならないときなど、日頃からの理解があるからこそ動きやすくなります。子どもの世話はママだけのものでありません。もちろん仕事の成果を出すことも忘れずに。

タイムマネジメント

1日は24時間と決まっています。その時間をいかに有効に使うかが、家族時間を生み出すポイントとなります。その一つとして朝型シフトがあります。早朝は雑音が無く集中して仕事ができますし、家族が起きだす時間まで、と終わりが決まっていますので集中力も高まります。働くママたちは、保育所の送り迎えで仕事の終わり時間が決まっているので、効率よく集中して仕事をしています。何となくの残業をしている男性も多くいるのではないでしょうか。子育ては働き方を見直すチャンスでもあります。

男性の育休取得のススメ

育児休業は女性だけの制度ではありません。産後すぐの育休は、パパとしての自覚、子どもとの関係性や新しいパートナーシップの構築の重要な時期に、しっかりと育児・家事に携わることができます。育休は決して仕事をさぼるわけではありません。逆に育休取得をすることで、総合的な人間力も向上します。長い仕事人生の中のほんの数パーセントの期間です。最初から取らないことを前提とするのではなく、将来の家族のビジョンも含め、パートナーとしっかり話し合った上で検討されてみてください。

社会に求められるイクボスとは

イクボスとは部下のワーク・ライフ・バランスや人生を応援しながら、組織の業績や結果を出すことができ、なおかつ、自らも仕事と私生活を楽しんでいる上司(経営者・管理職)のことです。「早く帰って育児・家事をしたいけど、帰りづらい」「育休どころか、有給さえ取れない」そんなパパたちの声を聞きます。それらは、上司や経営者の固定化した価値観・仕事のやり方・男女の役割意識が問題です。イクボスやワーク・ライフ・バランスを推進している組織は、従業員の満足度・健康度・ロイヤリティを上げ、組織の生産性向上と利益拡大にも繋がっていきます。イクボスを目指すために、まずは自分自身が楽しんで育児を行ってください。


 

元FJQ代表小津
元FJQ代表小津
「イクメン」という言葉が広がり、主体的に育児や家事を行う男性も増えてきていま
す。その中で、我々が目指すべき父親の姿とは「九州男児」の男らしいカッコよさがあ
りながら、パートナー、子どもたちを大切にする姿です。それは「育児しよう!」「家事
をしよう!」「育休とろう!」という形式的なことではなく、夫婦がいっしょに話し合っ
て、その夫婦、家庭にあったものを作り上げることが大切であると考えます。メディ
アなどの情報に踊らされず自分の考えをしっかり持つ、そんなカッコイイ父親、それ
が「“新”九州男児」です。それらを実践しつつ、一緒に父親を楽しんでいきましょう!