パパインタビュー

【第3回】育休取得の秘訣は会社トップへの相談!取得によって仕事スタイルも改善。妻とコミュニケーションを密にし、「ワーク」の共同戦線を構築(熊本県民テレビ:大塚利樹さん)

このインタビューは、「令和3年育児・介護休業法改正特別企画」として、産Q育Qプロジェクトのメンバーが、男性育休取得者から育休の体験談について話を伺う企画です。

第3回 パパインタビュー

大塚さんは現在30歳。熊本県内のテレビ局で夕方情報番組の企画VTR制作ディレクターを務めておられ、育休インタビュー初のメディア関係者です。メディアといえば、取材や番組編集などで残業も多いイメージがありますが、実際どうなのでしょうか。興味深く取材させて頂きました。

Q:取得のきっかけは?

いつからかはよく覚えていませんが、昔から「子供ができたら育休を取りたいな」と思っていました。ただ、2015年に熊本県民テレビに入社したあと、男性育休の取得者がゼロであることを知り、愕然としました(笑)。正直「この会社で育休を取ることができるのか」と心配になりましたが、初めてのことなら挑戦しがいがあるなと逆に燃えたことを覚えています。

Q:取得時期や取得期間はどうでしたか?

2020年生まれの長男の時に取得し、期間は4か月間でした。保育園入所のタイミングを探りながらの取得で、生後6か月で保育園へ入所し、慣らし保育を終えてGW明け復帰しました。

Q:取得の目的は?

大きく2つです。

まずひとつは「育児に関しても夫婦対等でいたい!」という私の思いからです。母乳を与えること以外は男性でもできるはずなので、できることは身につけたい性分というか…。
そして、育児は「ご飯をあげる」「お風呂に入れる」「おむつを替える」とかだけではなくて、授乳や睡眠といった「時間管理」やベビー用品の「在庫管理」、ワクチン接種や申請物などの「スケジュール管理」といったものも必要です。それらをこなすには、休業してコミットしないと心と体が持たないな…というのも正直なところありました。また、妻から「(育児は)手伝うじゃないだろ、あんたの子どもだよ」と某ドラマのセリフを何度も聞かされていたのも決定打ですね(笑)。

もうひとつは「妻が職場への早期復帰を希望していた」ことです。妻は出産後、産休と有休を組み合わせて3か月ほどで復帰しました。私たちの住んでいる地域は、子育て世代が急増している地域のため、保育園へは「4月入所」が一番のチャンス。入所までの間をつなぐため、妻とリレーする形で私が育休に入りました。コロナ禍で妻の在宅勤務も多かったのですが、授乳以外はワンオペで育児のイロハを学びました。

Q:目的が明確で素晴らしいですね。そして、育児はスケジュール管理や在庫管理といった「仕事と似ている」という点にも共感です!さて、会社との調整で大変だったこと、会社や上司の反応は如何でしたか?

会社として初めての男性育休でしたが、大変だったことは全くありませんでした。実は、結婚のお祝いで社長から食事に誘ってもらった時、「もし子供を授かったら育休を取得したいのですが…」と相談していたんです。社長からは「是非、取得しなさい」という言葉をもらい、これまでにない後押しとなりました。直属の上司や部署の同僚からも「いいね!」というあたたかい反応ばかりで逆にびっくりしました(笑)。

個人の仕事に関しては、自身の裁量が大きいディレクター業務だったので、引き継ぎもほとんどなく、他の社員との役割分担も大きな問題にはならなかったと聞いています。私の後には社内の男性育休ムードも高まり、営業職の同僚も育休を取得したので、どんな業務内容でもやればできるんだな、と感じました。もちろん、職場のみなさんの協力や会社の経営努力が不可欠ですが。

諸々の手続きに関しても、当時の総務担当が育休を経験した女性の先輩だったのでアドバイスをもらいながらスムーズに行うことができました。

Q:素晴らしいですね。奥様との役割分担は如何でした?

まず、取得となれば収入面での変化もあるので、事前に妻とも十分相談しました。そして、平日は基本的に私がワンオペ育児に取り組みました。授乳は母乳メインで行っていたので、妻が在宅勤務中は授乳をお願いして、外出する際は冷蔵・冷凍保存分を用意してもらう形です。私の育休中はちょうど離乳食が始まる時期で、妻に仕事終わりに食材を買ってきてもらい、私が作るという流れが多かったように思います。

ちなみに、育休中は自分の運動不足が心配になったので、妻の仕事が終わったあとに「1時間ください!」と言って近所の公園に走りに行っていました(笑)。

Q:奥様との強力なタッグが目に浮かびます。さて、取得した率直な感想は?

取得して良かったと心から思います!が…正直言うといいことばかりではありません。育休に入ることを仕事で付き合いのある方々に連絡することは、一苦労ですし、長期で職場から離れることの漠然とした不安、収入減などマイナス要素もあります。ただ、これらのことを、出産した女性は否応なく経験しているのです。4か月とはいえ自らも同じことを体験できたことは、大きな収穫だと思っています。

また、現在、妻が2人目を妊娠中なのですが、「においつわり」で長男のにおいがダメになってしまったんです。その間は仕事もしながらワンオペ育児をすることになり…。なかなかハードではありましたが、育休時のワンオペ経験もあったので乗り越えることができたと思います。

Q:家事・育児力も向上されたのですね!ところで、収入面はどうでした?

育児休業給付金をもらっていたのですが、月額で見ると手取り感はそれほど変わらなくて安心しました。ただ、その期間は「休業」なのでボーナスが4か月分ごっそりなくなるのは地味に打撃でした(笑)。

Q:そうですね。ボーナスは私も想定外ではありましたね~。取得したことで変わったこと、仕事スタイルへの影響はありましたか?

まず、生活スタイルが「家庭優先」に変わりました。これは決してネガティブな意味ではありません。自分が育児の“主役”であるという自覚が芽生えたからこそ、仕事の効率化やメリハリを考えるようになりました。

そして、残業しなくていいように何でも早めに動くクセがつきましたし、おかげで物事がスムーズに進んで仕事が楽しくなりました。自分で言うのもなんですが、育休後の方が仕事の成果も上がっている気がします(笑)。コロナ禍でオンラインインタビューなどが当たり前になったことも、業務効率化に役立っています。

Q:仕事の効率化は、多くの経験者が語られていますね!!最後に、これから取得する人アドバイスするとしたら?

育休を取得することは、楽しいことだけじゃなくて大変なことも多いです。個人的には、“育児留学”の気持ちで取り組みました。取得にあたっては、「なぜ育休を取るのか」ということを夫婦でしっかりと話し合って決めてほしいなと思います。

ただ、ひとつ言えるのは、後悔することはひとつもないということ!育休で“失う”と思っていたことはほんの些細なもので、得られる経験はこのタイミングにしかないものだと思います。
ちなみに私は、2人目が生まれるときも育休を取得します。期間については妻と話し合い、収入面とのバランスを考えて、乳児期の2か月を担当することにしています。

(編集後記)

30歳と私の一回り以上も下の大塚さんでしたが、非常に育休に対する考え方がしっかりしておられ、感銘を受けました。また、FJQでも提唱している「育休は家庭内留学」というメッセージと共通の認識を持たれており、大変共感しました。

これまで3名の方をインタビューしてきましたが、皆、奥様と密なコミュニケーションを取られており、もはや育休成功の1つのマスト要件と思います。そして、漠然と残業の多いイメージのあったメディア業界でも、働き方のスリム化は可能なのだという強いメッセージを頂き、新しい時代が訪れていることを確信した次第です。お二人目の育休でもご活躍をお祈りしています!!