企業/自治体インタビュー

【第1回】男性育休が当たり前になることを目指し、様々な取組を行っていく(九州電力株式会社)

【インタビューの目的】
今般、改正育児・介護休業法に基づき、男性育休取得条件が緩和され、企業にも取得者に関する情報公開の義務化等の法整備が行われることに伴い、ファザーリングジャパン九州では、「産Q育Qプロジェクト」として、取得者へのインタビューを実施してきましたが、今後、男性育休を促進し、男女がより多様な生き方を選択できる労働環境を構築していくためには、企業や自治体といった雇用側の変革も欠かせません。そこで男性育休を推進する企業および自治体向けのインタビューもあわせて実施していきます。

第1回 企業インタビュー

  • 企業名:九州電力株式会社 人材活性化本部ダイバーシティ推進グループ 帆高様、労働政策グループ 藤本様
  • インタビュアー:FJQ 樋口

――この度は、記念すべき第1回の企業インタビューに応じて下さり、誠にありがとうございます。これまでの御社での男性育休推進の取組について教えて下さい。

これまで、当社では従業員が仕事と育児を両立しながら活躍できるように、制度の充実や風土醸成に向けた取組を行ってきましたが、2022年4月からは、多様な価値観やライフスタイルの従業員が挑戦・活躍できる会社となることを目指し「いくQ-over2weeks-」をスローガンに、男性社員も2週間以上の育休を取得することを推奨しています。

制度面では、子どもが満1歳になるまでの育休について、初めの10営業日を有給化したほか、子どもの出生予定を報告した従業員に対し管理職による面談を義務化しました。また、育休の相談窓口を本店・支店に設けたほか、パパとしての心構えや育休制度、妊娠・出産に関する有益な情報を盛り込んだ父子手帳「PAPANOTE(ぱぱのて)」を作成し、子どもの出生予定を報告した男性社員に対し、所属長から配付することとしています。

加えて、社内風土づくりの面でも、管理職向けには男性育休推進の意義や、部下への働きかけ方法等に関する研修を実施し、男性社員向けには男性が育休を取得することによるメリットの説明や、実際に育休を取得した社員の経験談や改善点などを直接聞くことができる父親学級を開いています。

――制度面、風土面でもかなり整っていますね!管理職のマインドセットが鍵になりそうですが、どのような取組を行ってますか?

育休の取得について、言い出しにくいということがないように、PAPANOTEを上長から本人に手渡し、上長から取得の意向確認や働きかけをすることをルール化しています。このPAPANOTEには育休の制度や育休取得から復職までの流れなどを掲載しているため、管理職自らがまず育休取得への理解を深めた上で、当事者との面談を行うようにしています。

――推進には、企業トップや経営層のコミットが非常に重要と思いますが、御社は如何でしょうか。

社内テレビ番組において当社社長の池辺から、社長自身の子育て経験談や、男性育休の重要性を伝える等、トップメッセージを発信頂きました。

また子どもが生まれた従業員に対し、従業員の喜びは会社の喜びという思いを込めて、社長からのおめでとうのメッセージカード(ハローベビーカード)を送付しています。

――トップによるメッセージ発信、素晴らしいですね!御社でこれまで男性育休を取得された人数、期間を教えて頂けますか。

2021年は26名で、取得可能者に占める割合は、8%程度でした。しかし、今年度から、前述のような取組を強化した結果、今年度4~8月で83名の取得となり、割合も80%程度まで上昇しました。取得の平均期間は30日で、2週間以上の取得は全体の45%に上っています。

――九電さんの本気度が伺えますね!御社にとって、男性育休取得による会社にとってのメリットを教えて下さい。

社長の池辺も発信していますが、育児の経験を通じて個人として成長する機会となることや、仕事の効率化やメリハリのある働き方に繋げていく機会となることを期待しています。
また、育休を通して普段接していない地域社会と向き合うことは、新たな価値観を形成することにもつながり、イノベーションの源泉となると考えています。

――まさに取得経験者が口を揃えて言われていることですね!今後、社内で男性育休取得を推進していく上での課題があれば教えて下さい。

社内で実施した意識調査によると、30歳以下の男性従業員の約8割の方が仕事と育児の両立支援制度を利用したいと答えています。しかし、現実として「職場に迷惑がかかるのではないか」という思いなどにより、利用をためらう状況もあるため、気兼ねなく育児休職を取得できる職場となるよう、職場全体への意識醸成が課題と考えています。

また、育休を取得するにあたって、「取るだけ育休」にならないよう、取得者の体験記等を定期的に社内イントラ等で発信しています。取得する側もそれを支える職場も、お互いに、意識を高めていくことが重要だと考えています。

――最後に、男性育休推進に向けて、社会に発信したいこと等お願いします。

当社は2023年度に、男性育休取得率100%となることを目指しています。当社にとってチャレンジングな目標設定ですが、男性育休が当たり前になることを目指し、様々な取組を行っていきたいと思います。

(編集後記)

インタビューには、前回取得者としてもお話を伺った帆高さんに、再度登場頂きました。なんと、社内イントラで帆高さんの育休取得記事を紹介して頂いたところ、週間ランキング1位の「いいね」を獲得されたとのことでした(笑)。男女問わず、男性育休が当たり前になる時代が近づいていると確信できました。
九州電力様の会社としての取組に話を戻すと、やはり、「トップのコミットメント」が大きいと感じます。トップ自ら、実体験を語り、育児参画のメリットを紹介するといったところに、持続可能な社会を目指す九州電力さんの将来ビジョンが表れていると感じました。2023年、是非100%達成のインタビューをさせて頂ければと思います!