企業/自治体インタビュー

【第6回】男性育休は、妻とともに過酷な戦いを乗り越える『育児救業』。男性育休は離職率低下、リクルート、社員の人材育成にも有効(えびの電子工業株式会社)

第6回 インタビュー

今回の企業インタビューは、前回のタカギさんに続き、ものづくり系中小企業、そして、企業インタビューを始めてから初の宮崎県の企業さんとなる、えびの電子工業株式会社さんです。宮崎県内では有名な子育てしやすく社員を大事にされている企業さんとして、既に多くのメディアにも取り上げられているとのことで、ありがたいことに社長自らインタビューに応じて頂きました。

――これまでの男性育休推進の取組を教えて下さい。

当社は従業員の3分の2が女性で、これまでも働きやすい職場づくりに努めてきたのですが、2018年に、出産される奥さんの体調が悪かったため、育休を取って奥さんの実家に6カ月付き添った社員が初の長期取得者になります。2020年10月26日、私が専務の時に「イクボス宣言」、私が社長になった2021年04月28日には、「男性育休100%企業宣言」を行いました。家庭の一大事を当たり前に応援できるような会社でありたいと考え、男性育休を推進しています。

🔗参考:ワークライフバランス社「男性育休100%宣言」

――育休100%宣言、素晴らしいですね。津曲社長ご自身も取得されたとのことですが。

はい。2019年9月に2週間の育休を取得しました。それまでは男性育休はやむを得ない場合にのみ取得するという社内の雰囲気があり、それを打破したいと思ったのと、3人目の子供だったので、妻から「人手が足りない!取ってくれたら本当に助かる」というサインが思いっきり出ていたので取得しました。

津曲社長が会社に提出した書類

――育休宣言後の取得率はどうなりましたか?

2021年度は1/2人、2022年度は2/2名が取得しました。2021年に取得しなかった1名も有給をのべ2週間程取得して育児を行っています。

――トップの取得の効果が表れていますね!男性育休取得による会社にとってのメリットを教えて下さい。

男性育休は、ジェンダー平等の推進に非常に有効です。余計なコストではなく、人材の育成と確保に必要な投資と捉えています。

また、これは男性育休だけではないのですが、介護でも休みやすい風土を作ったり、パート→正社員、正社員→パート等、従業員のライフの事情によって雇用形態を柔軟に変更可能にしたりして、社内の働き方の多様性を高めているため、離職率は下がっています。また、地方にあり、給与面でも大企業のような水準は難しいですが、リクルートにも好影響が出ています。

さらに、育休から戻った男性職員は、テキパキ業務をこなして早く仕事を終えて自宅に帰るため、人事評価も高く、まさに人材投資なのではないかと思います。

――社内で男性育休取得を推進していく上での課題感、それをどのように解決していこうとしているか等の取組があれば教えて下さい。

以前は「未取得者の不公平感」や「固定概念」、そして「無意識の偏見」などが課題でした。しかし、トップが率先して取得し、未取得者には「親への介護でも休めますよ」と説明し、メディアなどに取り上げられる事で安心感が広がり、意識改革が進みました。

――その他、男性育休推進に向けて社会に発信したいこと等ございましたらお願いします。

育休を取った方は分かると思いますが、会社で仕事する方が楽です(笑)。育休は、全く休めずに眠れず、赤ちゃん育児中の我が家は、エンドレス残業のブラック家庭と言えます。男性の育休は、妻とともに過酷な戦いを乗り越える『育児救業』と言いたいです。

身を削る出産で動けない「妻」を、一生のパートナーの「夫」が夜通し支える。大変だからこそ、家族の幸せを実感できる最高に幸せなレスキューではないでしょうか。我が社では1ヵ月以上の取得を推奨しています。父の活躍と幸せが家庭と組織を支えると思います。

最後に、本年9月に「女性の再就職応援宣言&再入社パスポート」を発行するプレスリリースを行いました。これは、男性女性に限らず、結婚、育児、介護、パートナーの転勤等で離職した従業員の再チャレンジを応援するもので、「いつでも帰っておいで」と背中を押すものです。離職されないに越したことはないのですが、離職しても成長して戻ってくる人を受け入れる会社でありたいと思います。

🔗参考:

 

(編集後記)

企業インタビューでは皆様の多様な発想にいつも驚かされることが多いのですが、津曲社長とのインタビューはこれまでにないほど濃密な時間で、刺さるキーワードが多すぎて全て紹介しきれないほどでした。。男性育休は人材投資と言い切られ、他にも不妊治療支援や技能実習生への教育支援を行い、成果も出てきており、社長の覚悟が会社のレジリエンス(耐久力、弾力)を高めておられることがよく分かりました。

これからやりたいことは、との問いにも、職員同士の感謝カード等アイデア盛りだくさんで、是非また少し経ってからお話させて頂きたいです。

「再入社パスポート」のくだりでは、事情があって出ていく人がいても「北風と太陽」の太陽のような会社でありたい、というコメントが印象的で、政府が進めるリスキリング政策もこのような考え方の企業さんが多くおられれば、未来志向で回っていくのではないかとも思えました。