第4回 インタビュー
- 自治体名:佐賀県 人事課 山下様、御厨様
- インタビュアー:FJQ 樋口
今回の育休推進組織インタビューは、自治体としては第2回の古賀市に続く、初の県庁インタビューとなる佐賀県です。佐賀県さんにはFJQも、「育休ガイドブック」、「マイナス1歳からのイクカジプロジェクト」事業の受託等でこれまでお世話になっており、「子育てし大県(たいけん)“さが”」を掲げ、九州の中でもピカイチに子育てに力を入れられている県という印象です。今回は、男性育休推進に係る取組を中心に子育て支援について県庁全体で力を入れておられることについて伺いました。
――これまでの貴県での男性育休推進の取組について教えて下さい。
はい。職員が2週間以上育休を取るのが当たり前になるように「ハッピー・ツー・ウィークス」という取組を令和3年10月から開始しました。現行の休暇・休業制度を変更した訳ではなく、有休や産後休暇、育児休業等、既存の制度を組み合わせて2週間以上取得することにより、2週間以上の取得率を100%にすることを目標に始めました。
この取組の理念の根底にあったのが、「職員の多様な経験が活きる強い組織を作る」というものです。子育てにコミットすることで、①職員の意識改革 ②職員の働き方改革 ③父親が関わることによる子供の変化 という3つの変革が可能になると考えています。
――単に福利厚生ではなく、強い組織を作るという最終目的、素晴らしいですね!「ハッピー・ツー・ウィークス」についてもう少し詳しく教えて下さい。
2週間をイメージしやすくするために、次の4つのパターンを取得者に示しています。①出産後すぐ取得するスタンダード型、②必要なタイミングで分割して取得するセパレート型、③妻と同時に取得するダブルス型、④妻の仕事復帰後に取得するバトンタッチ型 です。それぞれ、取得の際に職員が作成する計画書の中で図を用いて説明しています。
(参考)「ハッピー・ツー・ウィークス」について
🔗「ハッピー・ツー・ウィークス」に関する詳細はこちら(PDF)
また、この取組を始めるにあたって、取得しない場合、「不取得理由書」を出してもらうことを義務化したところ、対象者の取得率は100%となっています。
ほかにも、これは県内企業にも普及を図っているのですが、子供が生まれた部下に対して上司がメッセージを送る「ハッピーカード」も県庁内で取り組んでいます。
(ハッピーカード)
――パターンの見える化に、逆転の発想の不取得理由書!お金をかけずに制度化できる素晴らしい工夫ですね。男性育休推進には、企業トップや経営層のコミットが重要と思いますが、貴県は如何でしょうか。
「子育てし大県”さが”」は知事も掲げる県政の重点事項の1つですし、知事本人が育休を取得したことを公言されており、説得力を持って庁内に受け止められています。
――貴県でこれまで男性育休を取得された人数、期間を教えて下さい。
令和3年10月に「ハッピー・ツー・ウィークス」を始めて以来、令和3年度、令和4年度は対象者のそれぞれ40名、73名が全員2週間以上の育児に関する休暇等を取得しています。また、法律上の育児休業も、令和3年度は17.9%、令和4年度は27.4%と徐々に取得率が上昇していますので、さらに率を上げていきたいところです。
――男性育休取得による県庁にとってのメリットを教えて下さい。
まずは家庭内での役割に気づくことができ、新たな発見が生まれることだと思います。これは、家庭のみならず、仕事においての新たな考え方や気づきにもつながると考えていますし、子育ての重要性を知った後ではメリハリをつけた効率的な働き方や業務の見直しという意識変化も起きると思います。
――今後、庁内で男性育休取得を推進していく上での課題はありますか?
育児休業の取得率は、まだ上がる余地があるので、取得者の声や制度を周知することで上げていきたいです。
――最後に一言、お願いします。
「子育てし大県”さが”」の取組を県内全体に広めていくためにも、まずは県庁という組織の中から育児に対する意識改革の雰囲気を作っていければと考えています。現在、育児休業は主に20~40代の職員が取得しているため、これらの層が上司層になっていった時に組織としても大きな変革が生まれるのではないかと期待しています。
「子育てし大県”さが”」の浸透に向けて、具体的にもたくさんの工夫を行っておられる佐賀県さん。私が特に感銘を受けたのは、取得パターンの庁内見える化でした。4パターンを示すことで、多様な家庭内での役割分担について、実感を持って感じてもらうことが可能になると思います。
育休インタビューを行っていても多いのが「どの程度の長さ取得すれば良かったか分からなかった」という感想で、ロングスパンで取得計画を考えることで、このような事前の悩み解決にも役立つと思いました。これからも、九州一、日本一の子育て県を目指し多彩な取組を期待しています。