企業/自治体インタビュー

【第3回】育休推進のため、上長と社員のコミュニケーションを促進。取得しやすさのカギは会社全体の「理解浸透施策の実施」と職場の「風土づくり」(株式会社ドコモCS九州)

第3回 インタビュー

  • 企業名:株式会社ドコモCS九州:総務部 採用育成ダイバーシティ推進担当 田中様、高木様、池上様
  • インタビュアー:FJQ 樋口

ドコモCS九州さんは、NTTドコモの関連会社で基地局等のネットワーク建設や保守に係わる業務やドコモショップなどの代理店支援業務を行っておられ、従業員は約1890名です。男性育休の推進に当たっておられる採用育成・ダイバーシティ推進担当三名にこれまでの取組をお伺いしました。

――この度は、企業としては2社目となる本企画のインタビューに応じて下さり、誠にありがとうございます。これまでの御社での男性育休推進の取組について教えて下さい。

1つ目に、社員の職場とのつながり維持と、キャリア継続をサポートするため、「スマイルリレー」という制度を設けており、産前期の社員や産前のパートナーがいる社員への面談を上長に必須としており、社員の育児と仕事キャリアの両立をフォローしています。具体的な取り組みをご紹介すると、年1回子育て期にある社員とその上長を対象に研修を行っています。研修の中でディスカッションも行い、男女間のアンコンシャスバイアスに気づいてもらったりしています。

2つ目に、育児休職に対する職場の理解を深めるため、マンガを描くのが得意な社員を社内で募集し、子育て体験マンガを作成したり、社員出演のショートドラマを動画で作成し、育児期の家庭のリアルを実感してもらうため社内で共有しています。

3つ目に、実際に育児休職をとった男性社員のリアルな声をとどけるため、社内報に「育休パパのリアル」というコーナーを設け掲載しています。更に最近では「育休中のお金にまつわる座談会」をファザーリング・ジャパン九州の森島様にご協力いただき、実際に取得した男性社員3名とのトークセッションをオンラインで配信しました。

――マンガや動画など、独自の取組や制度が目白押しで、恐れ入りました!男性育休推進には、企業トップや経営層のコミットが非常に重要と思いますが、御社は如何でしょうか。

はい。組織のトップである社長から、日常的にD&I(ダイバーシティ&インクルージョン:多様性と包括性)に関して社員に対してメッセージを発信しています。また、組織長と社員の対談といった形で多様性の理解を促進する活動も行っています。加えて、総務部長からパートナーの妊娠報告をした社員とその上長、組織長に対して育休取得を促進する内容のメールを発信しており、育休取得に役立つ社内制度の紹介も行っています。

――継続的なメッセージの発信が一番ですね!御社でこれまで男性育休を取得された人数や期間を教えて下さい。

直近のデータですが、2022年の4月から12月まで、男性育休の(取得可能な)対象者は22人だったのですが、全員取って頂くことができました。長い方で半年という方もおられましたが、平均日数は22日でした。

――100%は素晴らしいですね。男性育休取得による御社にとってのメリットを教えて下さい。

エンゲージメント(仕事に対するポジティブで充実した心理状態)やWell-beingの実現のためには非常に重要だと考えています。また、社員の業務効率化や生産性向上にも寄与するものと思います。結果的に企業のイメージ向上やリクルートの際にもメリットは出てくることが期待されますし、女性活躍推進にもつながってくると思います。

――社内で男性育休取得を推進していく上での課題感はありますか?

育休中の収入について不安だという声がありましたので、(前述の)「お金にまつわる座談会」を開催しました。事前知識があれば不安感の払しょくや早めの準備にもつながると思います。また、課題ということではないですが、以前は育休前の上司と部下の面談の際のマニュアルについて、女性が取得する前提で作られていたこともあり、男性育休の場合のフローチャートを加えるなどマニュアルを更新しました。また、「制度が複雑で提出物が多い」という声に応えるため、「育休To Doリスト」を作成し、手続きを少しでも分かりやすく感じてほしいと思っています。

――最後に、男性育休推進に向けて一言お願いします。

当社でも、部署によっての取得に関する温度感はまだ異なっているのが現状です。よく、業務によって取得のハードルが異なるのでは、と言われますが、男性育休を推進してきて感じるのは、そういった業務内容の差ではなく、「風土づくり」が非常に重要であるということです。風土が整った組織では、育休取得に関しても、工夫を凝らしてお互い様の文化で相互に支え合うことが可能になってきます。また、取得することが最終目的化しないよう、今後も啓発していきたいと思います。

 

(編集後記)

企業としては2社目のインタビューとなりましたが、独自の様々な職場内への「発信」手法には感銘を受け、是非、他社にも紹介したいと思いました。2022年度は男性育休取得率100%を達成された同社ですが、男女問わず育児しやすい雰囲気づくりのための情報発信を続けてこられたことが評価され、2021年に福岡県の表彰を受けられたとのことです!また、2022年の国際女性会議では、男性育休を取得された方が共働き当事者の観点からスピーチを行われたとのことでした。

担当の方が最後におっしゃった「最終的には、育児期にあるなしに関わらず、全てのライフスタイルの方が必要な時に休みを取れ、仕事でも活躍できる組織を」という言葉も胸に刺さりました。引き続き、会社をあげてのワークライフバランス推進を期待しています!

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