パパインタビュー

【第16回】会社へは両立支援等助成金を示しながら取得を打診。「君が良いきっかけをくれた」と経営者からのお礼に驚く。育児と仕事の両立はスキルアップへの近道(株式会社エーワン・片桐亮さん)

このインタビューは、「令和3年育児・介護休業法改正特別企画」として、産Q育Qプロジェクトのメンバーが、男性育休取得者から育休の体験談について話を伺う企画です。

第16回 パパインタビュー

  • 取得者:片桐 亮(かたぎり りょう)さん(42歳)(勤務先:株式会社エーワン
  • インタビュアー:FJQ 樋口

片桐さんは、印刷やWEB関連の業務を手掛ける株式会社エーワンで営業を担当されています。現在、お子さんは3人で、2人目、3人目となる長男及び次女の時に育休をそれぞれ約20日間取得されました。

Q:2人目、3人目で取得されたということですが、取得にあたって特にこれをやりたいといった目的があったのですか?

実は1人目の長女の時にも同じように休みを取りたいという意識があったのですが、退職などの事情があって制度的には取れず、転職前の有給消化期間をサポートに充てました。2人目以降は、命をかけて産んでくれた妻に寄り添い、サポートをしたい、そして命をかけて産んでくれたわが子を一緒に育てたい。
また、新生児目線でも、最初に父親と過ごす時間を作りたいという強い思いがありました。

Q:取得はもともと予定されていましたか?職場への切り出し方は?

育休の制度は子供ができる前から知っていたので、自分なりに勉強し、国の両立支援等助成金というものが事業所にも給付される等のサイド情報を会社へ説明しつつ、自分が取得したいことを伝えました。

実は1度目の育休と2度目の育休では勤め先が異なっており、1度目の育休の際には介護系の職場だったのですが、職場の反応は育休に理解があるとはとても言い難いものでした。逆に2度目は今の会社だったのですが、営業職ということで、なかなか切り出しづらく、勇気をもって会社に伝えたところ、理解していただき受け入れてくださいました。職場復帰した時、当時の経営者の方が、全体会議で話題に出して下さり、「男性の育児についてこれまで考える会社ではなかった。今回、君が良いきっかけをくれた、ありがとう」とお礼を言われたのが大変衝撃で印象に残っています。

(参考)厚生労働省HP両立支援等助成金

Q:それは素晴らしい体験ですね。トップの理解というのが大きいし、会社もダイバーシティ推進に向けて動けたというメリットもあったと思います。また、給付金があって、会社にもメリットはあるんですよね。取得時期は出産直後でしたか?

はい。出産直後にどれくらい妻の負担が大きくなるか分からなかったので、会社にはおおよそ2週間くらいと伝え、実際は育児が落ち着いた20日間くらいで育休を終えました。

Q:取得中の奥様との役割分担は?

長女はとにかく寝ない子だったので、夜の間の抱っこ担当など、長男は比較的寝てくれたので上の子のサポートなど臨機応変に対応していました。

Q:育休中の過ごし方は如何でしたか?

最初の7日間は、子供を抱っこしながらこちらまで泣きたくなるような心境で、社会と遮断され、自分の居場所がないような感覚になり、鬱に近いような心境にまで落ち込みました。実はその時、育休取得を勇気づけてくれた経営者の方が、自宅にまでお祝いを持ってきて下さり、本当に救われた気がしました。

また、育休中は、妻とのコミュニケーションが増え、洗濯1つ取っても、会話をすることで、乾きやすい干し方やたたみ方等を教えてもらい、家庭という場でも同志になれたような気がしました。

Q:経営者の方のサプライズと奥様とのコミュニケーションの深化。素晴らしいエピソードですね!取得したことで、仕事スタイルへの影響はありましたか?

誰よりも早く帰るようになりました(笑)。子供が熱発した時、どうしても妻が先に休むような形になりそうな時、妻から「男女格差だよね」と言われたことがショックで、それからは休める方が休むよう出来るだけ調整するようにしています。

Q:本当に、当たり前の休みを当たり前に取れる世の中になってほしいですね。これから取得する人へアドバイスするとしたら?

夫婦で話し合うことが本当に大事だと思います。時々、夫が育休を取ることで妻が「子供がもう1人増えたようだ」等と言うようなケースを聞きますが、どうするのがベストかは各家庭によって異なるので、日頃からコミュニケーションを取り、どのような子育てを目指すのかを共有することが大切ですよね。

Q:今思えば、もっとこうすれば良かったと思うこと等ありますか?

そうですね、当時は余裕があまりなかったですが、子育てを妻とサポートしあう姿を子供にもっと見せれば良かったかなと思います。

Q:その他、育休制度に関するご意見等あればお願いします。

取ることが迷惑、ということにならない世の中になってほしいです。むしろ取った人が偉い、組織の価値が上がるような仕組みができればと思います。子育てと仕事の両立は、2つのスケジュールを最適化することで、確実にスキルも上がるので、仕事人としても成長が見込めると思います。例えばインフルエンザになったら、突然明日から休まないといけませんが、育休はある程度予定を立てて臨めるので、職場にとってもいろいろやりようはあると思いますね。

あと、両立支援等助成金については、会社の経理の方が困るほど複雑な申請が必要でしたので、その辺がもう少し何とかならないかなと思います。

 

(編集後記)

奥様と、また職場でのエピソードが豊富で、こちらが聞き入ってしまうくらい熱く語ってくれた片桐さん。実は、自ら育児や家庭の大切さに目覚め、「いまパパ.」というパパサークルを佐賀県で立ち上げて、地域のパパへの発信活動も行っておられます。取得に当たり、会社へも説得材料として国の給付金を調べ、大変戦略的に交渉を進められたのだなと感銘を受けました。最後に、「取ることが迷惑、ということにならない世の中になってほしい」とおっしゃったのは、まさにその通りで、「お互い様」の文化が企業組織の成長も後押しするような社会になってほしいと共感した次第です。

🔗いまパパ. サークルパンフレット