パパインタビュー

【第32回】社内初の男性育休取得者として、不安に寄り添う人事へ。「今できるなら今やる」の精神で急な休みにも備える(株式会社田島組・中林清忠さん)

育休取得者プロフィール
  • 取得者:中林 清忠さん
  • 家族構成:本人(48歳)・妻・長男(6歳)・長女(3歳)※インタビュー当時
  • 育休取得期間:長男 0歳8カ月頃より約2カ月
会社DATE
  • 社名:株式会社 田島組
  • 所在地:鹿児島県薩摩川内市入来町副田2186番地2
  • ホームページ:https://www.tajima-gumi.co.jp/

Q:まずはご家族構成を教えてください。

4人家族です。
妻と、6歳で保育園に通っている長男、3歳で同じく保育園に通っている長女がいます。

Q:中林さんのお仕事について教えてください。

建設会社で、総務部に所属しています。
普段のメイン業務は公共工事の入札関係で、入札に参加するための申請書類の対応などを担当しています。
それに加えて、新卒・中途採用関係にも関わっていて、学校訪問や企業説明会などにも出展し、採用活動を行っています。
転職をきっかけに36歳のときに東京から鹿児島に移住し、現在12年目になります。

Q:育休を取得されていますが、どのタイミングで、どんな理由から取ろうと考えたのでしょうか。

育休を取ったのは、長男のときです。
長男は4月生まれで、生後8カ月くらい経った12月から1月にかけての約2カ月間、育休を取得しました。

正直に言うと、出産直後は「育休を取ろう」とまでは考えていなかったんです。
初めての子育てですし、妻が中心になってやった方がいいのかな、と思っていた部分もありました。
ただ、時間が経つにつれて、妻の負担を少しでも減らしたいという気持ちが強くなりました。
妻は翌年の春頃に職場復帰を予定していましたし、その前に自分も育児を経験しておくことは、家庭にとっても意味があると感じたんです。

仕事の面では、公共工事は年度末の2〜3月がどうしても忙しくなるので、会社としても現実的に動きやすい時期を考えました。
その結果、比較的落ち着きやすい12〜1月に取得することにしました。

Q:育休中は、どんなことを意識して過ごしていましたか。

一番意識していたのは、妻がひとりになれる時間をつくることです。

自分が仕事に行っている間、妻は子どもとふたりきりになります。楽しい時間もあるけれど、泣き止まない日が続くと、どうしてもひとりで抱え込んでしまう。

だから、私が見られるところはできるだけ見ようと考え、お風呂に入れたり、ミルクをあげたりと、子どもの世話も自分が担っていました。
外に出ること自体は、妻にとってリフレッシュになったようです。

Q:育休中は、どのように役割分担をしていましたか。実際にやってみて「得意だったこと」「難しかったこと」はありますか。

役割分担については、あらかじめ細かく決めていたわけではありません。
分担を決めるというよりも、その場その場で必要なことを自然にやるという感じでした。
それは今も変わっていません。

おむつ替えや着替えといった身のまわりのことは、あまり抵抗がなかったです。
東京にいた頃、福祉用具の営業の仕事で、紙おむつなどに触れる機会があったこともあって、必要以上に身構えずに関われたのかなと思います。

一方で、難しさを感じたのは食事の場面でした。
本人が食べたいペースと自分の食べさせたいペースが合わなかったり、日によって食べムラがあったりして、毎日試行錯誤でした。
量も分からず、離乳食を作ってみても、うまくいかないことは多かったですね。

ただ、そういうときほど、夫婦でよく話をしていました。
何が好きなのか、硬さはこれでいいのか、その都度確認しながら、少しずつすり合わせていった感じです。

結局は、やってみないと分からないことばかりなので、うまくいかなければ別のやり方を試してみる。その繰り返しでした。

Q:育休から復帰して、働き方や仕事への向き合い方に変化はありましたか。

保育園に預けるようになると、現実的な課題が一気に出てきます。
迎えはどちらが行くか、急に熱が出たらどちらが休むか。そこは夫婦で仕事の状況を見ながら、都度相談して決めています。
妻が残業で間に合わない日は、私が上司に相談して早めに帰り、迎えに行ったり、病院に連れて行ったりしています。

Q:急な休みに備えて、普段から意識していることはありますか。

「今できるなら、今やる」ということです。
明日でいいやと考えず、隙間時間でも少し進めておけば、急に休んでも支障が出にくくなります。

また、朝の時点で子どもの様子が怪しいときは、夫婦とも「今日は保育園から呼び出しがあるかもしれない」という構えでその日の仕事を効率的にする、という感覚です。

Q:ご自身が育休を取った経験は、人事としての考え方にも影響していますか。

影響はありますね。

私が育休を取得した際、社内の男性社員では初めてでした。
そのとき、社長からは「ぜひ取ってみてほしい」と言ってもらいました。
前例がなかったので、会社としても、実際に取ってみて考えていこう、という感じだったと思います。

取得が決まってからは、業務の引き継ぎをしながら、仕事が滞らないように調整していきました。
最初から決まったやり方があったわけではなく、その都度、話をしながら進めていった形です。

自分が実際に育休を取ったことで、これから取得を考える人に、どう説明すればいいか、どんなところで不安になりやすいかが、分かるようになったと感じています。

Q:実際に、社内で男性育休を取る社員が出たとき、どんな関わり方をしましたか。

次に育休を取る社員が出てきたときは、まず、取得するかどうかの意向を確認し、復帰後にどんな働き方を考えているのかも含めて、事前に話をしました。
制度の説明をしたうえで、現実的にできそうなことや、調整が必要そうなことを整理していきました。

あわせて、自分自身の経験も伝えました。
男性としてやれることは、妻がやっていることをすべて完璧に代わることではなくて、妻が大変だと感じているところを嫌がらずに引き受けることだと思っています。
そのためにも、私は妻から話を聴くようにしていました。言葉のやり取りがないまま動くと、お互いにイライラしたままになってしまうこともありますが、一度きちんと話をするだけで、気持ちが軽くなったり、解決策が見えてくることもあります。

実際に、第三子・第四子となる双子の誕生に合わせて、育休を取得した社員がいました。
そのときも、家庭の状況や仕事の内容を見ながら、どんな形がよさそうかを一緒に考えていきました。

育休は、実際に取得してみないと分からないことも多いので、状況に応じて、その都度調整しながら進めていくことが大切だと感じています。

Q:男性育休について、今あらためて感じていることはありますか。

男性育休そのものを、特別なこととして捉えていません。
家庭の状況やタイミングによって、必要だと感じたときに選択するものだという感覚に近いです。

会社としても、育休を「取りにくい環境」にはしたくないと思っています。
前例があるかどうかにかかわらず、まずは話を聞いてみる、というところから始めてきました。

実際には、やってみないと分からないことも多いですし、その都度、状況を見ながら考えていくしかない、というのが正直なところだと思います。

Q:制度面で、会社として工夫していることがあれば教えてください。

例えば「子の看護等休暇」は、法律上は子どもが1人の場合は年5日、2人以上で10日ですが、私たちの会社では、子どもが1人なら10日、2人以上なら20日に拡充しています。

実際に子育てをしていると、通院が定期的に必要なケースもありますし、法定日数だけでは足りないと感じる場面がありました。そうした実情を踏まえて、日数を増やしています。
うちの娘も卵アレルギーがあって、月に2回ほど負荷テストのために通院が必要なので、金曜日に夫婦で交互に休みを取りながら対応しています。

部署内を見ても、ご家族の通院で休暇を使っている人はいますし、障がいのあるお子さんがいる社員に対しては、子の看護等休暇だけでなく、介護休暇も使えるという説明をしています。
介護も子育ても、急に対応が必要になることが多いですし、「何かあったときに休みにくい」と感じるような環境にはしたくない、という思いがあります。

Q:最後に、会社や周囲への思いとして、伝えておきたいことはありますか。

会社には、感謝しています。

下の子の妊娠中、妻が切迫流産で急きょ入院することがありました。
住んでいる場所と職場の距離の関係で、保育園の送迎をすると始業時間に間に合わない日もあって、そのことを社長に相談したんです。
すると、「そちらのリズムで働いて構わない。保育園に送ってから出社して、迎えの時間になったら戻っていい」と言ってもらえました。

実際には、預けてすぐに保育園から電話がかかってきて、「すぐ迎えに来てください」と言われることも何度もありました。
そうした場面でも、周囲のスタッフがフォローしてくれて、何とか乗り切ることができました。
あのときの柔軟な対応や、周りの協力がなければ、ここまでやってこられなかったと思います。

社長とは「家庭が円満じゃないと、仕事もうまくいかないよね」という話をよくしています。
「仕事があって家庭」ではなくて、「家庭があって仕事」という考え方は、この会社の中では、自然に共有されている感覚だと思います。

※本インタビューは「薩摩川内市 共働き・共育て応援事業」で実施したものです。この記事の【PDF版】はこちら